風力エネルギーの有効利用
- Using Wind energy efficiently -

操縦可能な凧を使用して小型のタービンから風力を取り込む革新的な方法が、新たな基準になろうとしています。凧を完全に自動制御するのはマイクロドライブです。


今日、環境に配慮した発電がエネルギー源として注目されています。「環境に配慮した」という定義は、発電に限定しているのでしょうか。それとも発電施設も含むのでしょうか。現代の産業分野ではセメント工場と製鉄所が最もエネルギーを消費すると言われています。環境に配慮することが発電施設も含むとすれば、大型基礎構造や鉄塔は決してエコロジーとは言えません。EnerKite社の環境への配慮は非常に画期的で、巨大な風力発電ではなく、純粋に風の力を利用する為の主要コンポーネントに集中した、スリムなソリューションになります。操縦可能な凧がソリューションの主役です。風の一番良い状態の時間帯に空高く凧を揚げます。完全に自動制御された装置が上昇した凧の位置を維持し、凧からの風のエネルギーは、ロープを使用して発電機に伝達します。これは非常に効率の良い方法です。FAULHABER社の駆動装置が凧を制御し、突風に素早く対応できるようにします。 

新しい技術に必要な新しい考え方

発電の革新的な技術が、エネルギー政策を変えるために必要です。残念なことに、ほとんどの代替案は、蒸気機関時代を彷彿させる旧来の技術の派生です。旧来の技術がまったく役に立たないわけではありませんが、建築や運用コストを考えると、資源を大量に消費する過去の蒸気機関車と同じでエコロジーとは言えません。ローターと重量のある発電機は、曲げモーメントと大きな静荷重の負荷が、タワーに作用するため、風車の建設には大量の資材が必要になります。過負荷の問題がこのジレンマを一層複雑にしています。タワーはハリケーンが発生しても簡単に畳み込むことができません。安全に力を消散させるには、巨大なコンクリートの基礎や杭の基礎が不可欠ですが、これらの基礎が風力発電におけるほぼすべての原価といっても過言ではありません。さらに建設で消費する膨大なエネルギーも問題です。サイズと費用の点でも、地下構造はまるで厚さ2mの原子炉の鋼製ドームのようです。海岸から離れた場所の建設では、基礎工事に多大な費用が必要です。さらに耐用期間を過ぎた設備の解体に至っては疑問の余地がさらに広がります。 凧は古くから風を有効に利用するために使用されてきましたが、新しい材料と制御技術の導入によりまったく新しいものに生まれ変わりました。エネルギーを電力に変換するには、コイルで磁界を回転させる発電機が必要です。通常、回転運動は重量のある金属製のロッドとシャフトによって伝達されますが、EnerKite社の開発者が動力の伝達に使用したのは、繊維製の極めて丈夫で軽量な高性能ロープです。 EnerKite社のPeter Kövesdi氏は設計技師で風力装置の専門家ですが、ロープの使用は、細いスポークに張力をかけると、固い金属を使用しなくてもホイールが作れることから発想を得ました。ロープも非常に少ない材料で大きな力を伝達できます。

効率重視

EnerKite社では、パラフォイルと呼ばれる柔軟構造の凧を約150mの高さまで揚げます。この高度では地上と異なり、風は一定の早い速度で流れ、乱気流がほとんど発生しません。荷重ロープ1本と制御ロープ2本が、凧の牽引力をドラム型発電機3機に伝えます。凧は風によって100~300mの高さまで自動的に上昇することで効率的なエネルギーを発生させます。凧が最大高度に達すると、風の過度な抵抗を避けるために向きを制御し、ロープを素早く巻き取ります。この作業に必要なエネルギーはごくわずかです。その後、凧は上昇を繰り返してエネルギーを発生させます。Peter Kövesdi氏は、カイトの利点を現状の風力発電と比較し、説明します。風車の場合、ロータブレードやタワーにぶつかる風によって乱気流が発生しますが、凧は風の動きによって方向を変えるため乱気流が発生しません。これが風車より凧の効率が良い理由です。凧の高度は常に100m以上でそれ以下には下がりません。ローターのように時折地表に近づくこともなければ、ときにはタワーより高く揚がります。したがって、荷重が均一になるように設計する必要がありますが、凧は嵐がくれば即座に取り込むことができ、設備の維持コストは不要です。凧の高度が下がると、鳥と衝突しないようにロープの動きが緩やかになります。柔らかい素材を使用したパラフォイルは着氷してもすぐに取り除くことができます。 海上で発電する場合は、発電機フロートを単純なアンカーブイで固定します。陸上で発電する場合も、タービンは固定することも移動することもできます。巨大な回転翼用やタワー用の大規模な設備は不要で、凧もロープも、くるくると巻くだけです。

空中での正確な制御

EnerKite社はスリーライン凧の一種で、けん引ロープの他に2本の操縦ロープが取り付けられています。新しい技術を実用化にあたって、最も大きな問題は完全な自動制御でした。今では、EnerKite社はプログラムで完全に管理できるようになりました最適な制御は実行するアクチュエータによって決まりますが、ここにFAULHABER社のマイクロドライブが採用されています。ロープは張力がかかった状態でもドラムに正確に巻き取られます。風は変化する生き物と言われていますが、ネガティブガストと呼ばれる風が吹くと、制御ロープが突然張りをなくし垂れ下がる場合があります。これは、凧の飛行には問題ありませんが、張りを失ったロープを巻き取るドラムによって「No go」(中止)と判断されます。そこで、ロープに規定の張力がかかるように巻き取りドラムの前面に、ロープテンショナーを配置しました。圧力ロールの直径が約30mmで巻き取り速度が20~30m/sの場合、ロープ用モータは10,000rpm以上の回転数で作動する必要があります。また、状況に応じて回転数を都度変更しなければなりません。要求された性能を見事にクリアしたのは、出力約200Wの標準のモータでした。モータには純金属製の直径32mmの非常に頑丈な遊星ギアヘッドが連結され、圧力に対する高トルクを確実に維持できます。また、モータに対応したモーションコントローラがモータの動作を制御し、駆動装置の動力を最適化できるようにします。マイクロドライブは、新しい風力発電機の制御で重要な役割を果たしており、「小型で効率が良い」のがマイクロドライブの特徴です。小さいながらも、凧を風の変化に素早く対応させ、新しいエコシステムを実際の運用で安全に機能させます。システムで使用されたのはFAULHABER社の既存の駆動機器でしたが、開発者の要求を完全に満たし、困難な状況もコンポーネントをわずかに変更するだけで対応することができました。マイクロドライブの用途は、技術面より先入観で決めつけられているところがありますが、ここで紹介したアプリケーションは、珍しいアイデアでさえも実際に実現できる事を示しています。

凧による風力発電機の二酸化炭素排出量は140mの風車の半分、エネルギー出力は2倍
飛行の概念を示す図:8の字を描きながら飛行。凧は降下と上昇を繰り返し、上昇によってエネルギーを生み出す。