イノベーションの連携
- Innovation goes hand in hand -

靴ひもを結ぶ、シーツをたたむ、ポテトチップスの袋を破って開ける。片手だけで行うことが難しいことを書き連ねたリストはまだまだ続きます。先天性切断者または事故で手を失った人は、こうした障害に日々直面しています。毎日の生活をもっと楽にするために、英国企業のSteeper社は、ビーバイオニック筋電電動義手を開発しました。FAULHABERの強力な小型モータが、義手で難なく素早くしっかりと掴み、常に握力を維持することを可能にします。


私たちの知っている能動義手はSF映画の中だけで目にする存在で、装着すると超人的なパワーが発揮できるというものです。これに対し、バイオニックハンド(筋電義手)では実生活で活躍するスーパーヒーローにはなれませんが、装着するとほとんどの人にとって当たり前のいろんな動作ができるようになります。

直感的な動作

ビーバイオニック筋電義手の重さは400~600gです。これは、生来の手の重さとほぼ同じです。制御は体内の小さな電気信号で行います。これらの電気信号は筋肉の収縮によって生成され、心臓の検査時の心電図と同様に皮膚電極で測定できます。義手のシャフトに組み込まれた2つの電極が筋電信号を検出し、制御電子部品に信号を転送します。この信号を増幅して、親指とその他4本の指を動かす5つの小型精密モータ(それぞれが5本の指に対応)の作動に変換します。この方法で、義手が自発的に開いたり閉じたりします。すなわち、筋肉の収縮力が速度と握力を制御します。信号が弱いとゆっくりとした動作になり、信号が強いと素早い動作になります。
義手の開閉に使われる筋肉で、生来の手の手首の動作を実際に再現します。義手の装着者は、異なる機能が義手に備わっていることを学ぶ必要があります。「人の脳は驚くほどの順応性を備えています。車を運転する人が停止したいときにブレーキを踏むように、短期間で動作を直観的に行えるようになります」と、Steeper社のテクニカルディレクター テッド・ヴァーレイ(Ted Varley)は説明します。

さらなる制御を行うための多くの小型DCモータ

最初の筋電義手が市場に現れたのは1980年初めでした。単一モータで駆動するこの義手は、親指、人差し指、中指を閉じてピンサーグリップを行うシンプルな握力機構のみを搭載したものでした。薬指と小指は装飾的な理由でつけてあるだけで、握る力はありませんでした。このコンセプトは、今から約10年前に、ビーバイオニック筋電義手によって根本的に変わりました。「指がもっと柔軟になるのなら、1本1本の握力が弱くなっても納得してもらえると判断しました」と、ヴァーレイは説明します。ビーバイオニック筋電義手は、それぞれの指に専用の電気モータを搭載して個々に制御できるようにしています。親指以外の4本の指の4つの小型DCモータは、手のひらにあり、5つ目のモータは親指の中にあります。エンコーダをモータに組み込むことで、指の位置をいつでも正確に検出できるようにしています。

ビーバイオニック筋電義手の重さは400~600gです。これは、生来の手の重さとほぼ同じです。
それぞれの指は、専用の小型DCモータで動きます

また、指を個別に制御しているため、全部で14のグリップパターンを指に割り当てられます。親指以外の4本の指を曲げた状態で親指を上下させるキーグリップでは、プレート、鍵、銀行カードといった平らなものが掴めます。フックグリップでは、最大25キロの重い荷物を運べますが、このとき人差し指を伸ばしてキーボードやリモコンを操作することが可能です。パワーグリップでは、親指が他の指と向き合い、すべての指が抵抗を感じるまで閉じていきます。これは、ワイングラスなどの不規則な形のものを掴むためのパターンです。「このポジションは、ピンサーグリップよりもはるかに自然に見えます。また、すべての指を使うとグリップがさらに安定します」とヴァーレイは断言します。