リニアポジショナー

小型化の要求は高まっています。エレクトロニクス、機械工学、生物学の各分野でも、特に超小型構造物の寸法精度に関して、高い要求が求められています。サブミクロン・レンジの構造物において信頼性の高い測定を行うためには、専門家の技術知識が不可欠です。つまり「大型のシステム」を縮小された標準的なソリューションをそのまま採用することはありません。リニアポジショナーは、ピエゾ・アクチュエータによって測定プローブの下の微細な高低差の測定を可能にする長い間信頼性の高い方式でした。それはナノメートル・レンジでも信頼性の高い測定を行うことができます。しかし、リニアポジショナーの弱点は、駆動力が弱く、送り長さが限られていることです。共通スピンドルに搭載された高精度のピエゾ回転式駆動装置と組み合わせた高速DC駆動装置で構成される特許を取得したシステムは、この難題に対するソリューションを提供しました。今では、測定ポイント素早くに到達し、長い位置決め距離で最大分解能において最低速度での送りにより実現することができます。


高純度結晶の製造における超微細モーションコントロールと、サブミクロンメートル・レンジでの焦点合わせ、スキャン、調整、検査、測定などの作業における高精度かつ再現性のある動作が求められます。
従来のアプローチは、被測定物を動かし、測定プローブあるいはリニアポジショナーに取り付けられたアクチュエータの下を通過させる方法でした。ピエゾモータは超精密なステップ幅を実現できる装置として知られていますが、残念なことに被測定物を作業領域に移送するにはその駆動力では不十分です。
従来のソリューションも、多段式で広いステップ幅、遊びのない減速ギア機構に基づき、極めて低い分解能の下で達成させるため、非常に遅い速度で駆動させる必要性があり、測定位置に達するまでには数分間の移動時間を要します。
しかし測定までの準備時間が長いとコストがかさみます。そこで、精密動作の専門企業であるファインメス・ドレスデン社はこの難題を解決するためのソリューションを考案し、特許を取得しました。
精度は低いが高速での移送をDCギヤードモータで行い、次に精密調整を高精度ピエゾモータで行います。FAULHABERと連携して、この作業の組み合わせを調和させ機能するように最適化されました。

時は金なり

微小動作は、通常のポジショナーの動作に比べ、異なる原理を必要とします。距離が短いため、位置決め時間の重要な要素はモータの最高速度ではなく、加速・減速時間とセットアップ全体の機械的行程距離です。そのため、位置決め工程をダイナミックに向上させるためには、次の3つの要素に特別な注意を払う必要があります。精密測定の専門家は、作業を「分割」し、各動作に対応するようカスタマイズされたモータを使用してソリューションを提供しました。リニアポジショナーに2個のモータを収納する最適なソリューションは、ボールねじ搭載ユニットです。モータはボールねじの両端部に配置することができます。また、このような方法で製造された位置決めシステムは、コンポーネントを追加することにより、多くの応用例で効率を高めることができます。また他にも有利な点があります。理論的には送り長さに制限がないため、必要に応じてスピンドルを長くすることができることです。この方法により、一回のクランプ操作により多くの測定ポイントを持つ大きな被測定物もよる素早く処理することができます。対照的に、従来のピエゾモータでは、位置決め幅はほんの数ミリメートルに限られています。

本来の特性の活用

望ましいソリューションとは、最小コストで最大利益を達成するソリューションのことです。
ハイテクなソリューションであっても比較的単純なコンポーネントで実現することができます。あとはどのようにして実現するかです。たとえば、高速モードでの素早い位置決めの場合、ベローズ・カップリングによってシャフトにロータリーエンコーダを接続された従来のブラシモータは、駆動要素として十分です。
モータの駆動時間が比較的短いために、モータからの熱入力は無視できるほど低いレベルです。使用されるスピンドルピッチに応じて、0.5~100mm/秒の速度範囲が実用的です。この速度は多くの標準的なソリューションにおいて「粗位置決め」の値に相当します。高精度モードに切り替えると、新しいソリューションの特別な特長が明確になります。位置決めモードでは、システムは永久磁石カップリングを介して、0.5mm/秒の速度で回転式ピエゾモータを特徴とする駆動に無動力で(熱入力なく)切り替わります。静止すると、モータは受動スピンドルブレーキとして機能し、ポジショナーシステムの振動を減衰させ、不要な動きを防止します。高分解能リニア測定システムは、動きを連続的に記録し、その情報をモータコントローラに送信します。このようにして、モータはリニアポジショナーを0.00002~0.15mm/秒の速度、つまり最低速度20µm/秒の高精度モードで移動させます。範囲下限における速度の定常性は、使われるリニア・スケールの分解能によってのみ決まります。繰り返し精度は100µm未満です。作業分割手法に基づいて、位置決めシステムの速度範囲は、最高-最低速度範囲において100万分の1の比率を実現することができます。

最適移動

精密さを実現するのに、高いコストをかける必要はありません。従来のグラファイト整流子を搭載した精密モータは2速リニアポジショナーでの使用に適しています。この用途にはFAULHABERの標準モータが採用されました。このことにより、開発リードタイムとコストを削減され、また、要求トルクに応じて異なるモータを選定できます。たとえば、直径23mmのモータは7000rpmで最高トルク16mNmに達します。これらのモータは磁気エンコーダと連結して使用するように特別に設計されています。この2チャンネル・インクリメンタルエンコーダは、一回転当たり64、128、256または512パルスから選択できます。必要な減速や増速を行うために、直径22mmのモータにはプラグイン・ギア・ユニットが用意されています。それらは段階的に多くの減速比があります。FAULHABERグループのPiezoMotor AB社(スウェーデン)は高精密駆動装置としてピエゾ回転式モータを供給しています。これらのモータは同様に非常にコンパクトで、サイズはわずか32 x 23mm(L x D)、重さはたった70gです。モータは、0~3000Hzの範囲の制御電圧によって動作し、回転数は2100Hzで13.5rpmとなります。回転トルクは80mNm、保持トルクは90mNmです。最大インクリメンタル・ステップ幅は0.35mradです。外径3mm、長さ6.5mmのシャフトは永久磁石カップリングあるいはその他の装置へのリンクを提供します。
ナノメートル・レンジでの超高精密位置決めに携わるシステムの効率は、的確なアイディアによって飛躍的に向上しました。従来モデルよりも、長いストローク、高い精度、より速い位置決めは、ユーザーの貴重な生産時間を節約します。
このような利点があるにもかかわらず、この新しいソリューションは比較的単純な駆動コンポーネントを採用しています。特定の用途に最適化された信頼できる小型モータ製品は、通常、最も高度な技術を要する作業であっても確実に処理することができます。